医療人類学を学ぶために

「苦悩することの希望:専門家のサファリングの人類学」
浮ヶ谷幸代(編著)/協同医書出版社/2014年/¥3,500+税
- 関連する医学分野:
- 医学全般、看護学、理学療法学、社会福祉学、葬祭業
- 想定される読者:
- 思想好きの人にお勧め(ある程度の予備知識が求められる)
- 内容紹介:
本書は、国立民族学博物館共同研究「サファリングとケアの人類学的研究」(2009年9月~2013年3月)の成果の一つとして編まれた論文集である。医療人類学のサファリング(苦悩)研究では、これまで病む当事者の経験に焦点を当てる研究が数多く蓄積されてきた。サファリングとは、今日の圧倒的な力を持つ医療専門家の知識や実践ではなく、病気になる側の経験がいかに価値のあるものかを示すためのキーコンセプトでもあった。本書では、こうしたサファリング研究の流れからこぼれてしまっている専門家の苦悩に焦点をあてている。複雑な医療システムの中で多様な問題を抱える医療現場では、専門家自身が「専門性とは何か」と自問自答している。本書は、そうした苦悩する専門家と研究者との対話の本でもある。本書の構成は、なぜ専門家の苦悩を取り上げるかという理論的背景(序章)、サファリングとケアの理論(第一部)、医療福祉の専門家であり研究者でもある立場から(第二部)、人類学者と社会学者の立場から(第三部)、論文がそれぞれ収められている。医療福祉領域の論文に比べるとかなり長い論文となっているが、同じような問いを抱える実践家には特にお勧めしたい本である。