医療人類学を学ぶために

「病気だけど病気ではない:糖尿病とともに生きる生活世界」
浮ヶ谷幸代(著)/誠信書房/2004年/¥3,000+税
- 関連する医学分野:
- 糖尿病医学、糖尿病看護学
- 想定される読者:
- 実践者にお勧め(予備知識がなくても読める)
- 内容紹介:
本書は、人類学のフィールワークやインタビューという手法、そしてアンケート調査を駆使しながら、糖尿病をもちながら生活する当事者の世界を描き出したエスノグラフィである。日本において慢性病を扱った医療人類学研究の嚆矢となった学術書でもある。おおよそ20年前の調査に基づいているが、そこに紹介されている糖尿病の当事者の話は今でも決して色あせていない。むしろ、糖尿病を取り巻く医療の世界でいまだ同じような課題を抱えている患者が多いという現実は、いったい何を物語っているのだろうか?本書は、病気を持つ人たちの多彩な世界が医療専門家の論理とは異なることを多面的な切り口で示されているだけではなく、現代医療が前提とするような近代以降の二元論的思考(「病気である」と「病気ではない」)を相対化しているという意味で、人類学の学術書としての価値がある。糖尿病の患者に日々向き合う医療実践家には是非、手にとってもらいたい書である。