医療人類学を学ぶために

「タイ・マッサージの民族誌―「タイ式医療」生成過程における身体と実践」
飯田淳子(著)/明石書店/2006年/¥6,300+税
関連する医学分野:
東洋医学
想定される読者:
学部生にお勧め(優しい)
内容紹介:

伝統医療の動態に関する従来の研究は、マクロ・レベルや言説面に着目したものが多く、人々がその事態をどのように経験し、それにどう対応しているのかという点が十分に明らかにされてこなかった。本書では、国家レベルとローカル・レベルの複数の場面において、タイ・マッサージに関する権威や正統性がどのように構築されているかを、言説と身体との関係に焦点を当てて記述した。タイ・マッサージに関する権威や正統性の構築は、国民国家統合や医療化といった趨勢の中に位置づけられ、そこには国家や近代医療の権力作用を認めることができる。しかしローカルな実践の場において、人々はそのような権力作用にさらされつつも、国家レベルで構築されている知識の権威を限定的な文脈で、限定的な形でしか認めていない。こうした社会的・文化的文脈による権威的知識の多様性を、本書では北部の中心都市チェンマイの伝統式診療所およびチェンマイ県メーヂェーム郡の農村における約2年間の現地調査に基づいて明らかにした。