医療人類学を学ぶために

「苦悩とケアの人類学:サファリングは創造性の源泉になりうるか?」
浮ヶ谷幸代(編著)/世界思想社/2015年/¥4,200+税
- 関連する医学分野:
- 産科学、精神医学、地域医療、疫学、国際保健
- 想定される読者:
- 思想好きの人にお勧め(ある程度の予備知識が求められる)
- 内容紹介:
本書は、国立民族学博物館共同研究「サファリングとケアの人類学的研究」(2009年9月~2013年3月)の成果の一つとして編まれた論文集である。人間の生老病死をめぐるサファリング(苦悩)の経験とそれに対処するケア実践のあり方を国内外のフィールドからエスノグラフィックなアプローチにより読み解いている。これまで医療福祉の領域では、人びとの苦悩の経験は否定されるべきものもしくは克服されるべきものとして扱われてきたが、本書では苦悩を人間の根源的生の様式として捉え、人びとが苦悩に向き合うための術(すべ)を見いだす源泉になりうることを検証している。本書の構成は、サファリング論とケア論の理論的背景(序章)、不確実性が生みだす苦悩(第一部)、社会的苦悩とケア(第二部)、看取りと死をめぐるケア(第三部)とし、各部にそれぞれ3本の論文を収めている。そして、最後に哲学の立場からのサファリングとケアの論文を収載している。医療人類学の学術書であり、大学院生の必読書として位置付けているが、医療福祉の実践者も是非手に取ってほしい書である。