医療人類学を学ぶために

「多配列思考の人類学ー差異と類似を読み解く」
白川千尋、石森大知、久保忠行(編)/風響社/2016年/¥5,000+税
- 関連する医学分野:
- 国際保健、代替医療
- 想定される読者:
- 思想好きの人にお勧め(ある程度の予備知識が求められる
- 内容紹介:
本書はロドニー・ニーダムの多配列分類理論を発展させてきた吉岡政德の退官を記念して編まれたものであり、14人の執筆者が多配列の概念を参照した論文を寄せている。
このなかで医療人類学的観点から書かれた論文は、第2章 類似性から知識の動態へ―サモア社会の病気概念からみた多配列分類にもとづく社会分析の再検討(倉田 誠)、および第10章 「正答」のない「正しさ」を生きる―韓国におけるがん患者の療法(澤野美智子)の2本である。
倉田論文では、サモアにおいて病気の分類が個別に伝承され、病気概念によっては治療者間でほとんど一致しないほどの差異を見せること、しかしそれは問題とならず、病者と治療者の認識を摺り合わせて複雑で密な診療がなされていることが論じられている。
また澤野論文では、韓国のがん患者が療法を選択するにあたり、「正しい」ものと「正しくない」ものを厳正に区分しながらも、その区分基準を常に書き換えていることが論じられている。